見事な伏線回収

付き合っていた彼氏に予定をすっぽかされた。1日の予定が白紙に戻った今、いかに有意義に休日を過ごすかに私の精神状態がかかっている。予定をすっぽかされたなんて虚しすぎるじゃないか。おい、(元)彼氏。私の有意義な休日の過ごし方しかと見ておけ。NETFLIXを見てゴロゴロなどもう古い。私は外に出るぞ。私は勢いよく部屋のドアを開け、徒歩7分ほどの歯医者に車で向かった。途中信号に引っ掛かったので5分くらいかかった。先ほど電話予約したものだと告げ、歯垢除去をお願いした。自慢ではないが歯医者に行くのは5年ぶりだ。5年間溜まりに溜めた歯垢はどんなもんだと期待に胸を膨らませた。そんな期待とは裏腹に歯垢はほとんどなかった。しかし、あるかないかわからないような黒い点が見つかった。虫歯だ。先生は「これだけ小さければ少し削って終わりですね」と言った。私は今日の虚しさをこの黒い点に結びつけた。この小さな小さな虫歯を見つけるために、予定を彼氏にすっぽかされたのだ。全ては虫歯発見に必然のことだった。完璧な伏線回収とはこのことだ。
 ああ、今日も自分の歯で噛み締めるお米はジューシーでおいしい。そして今日もNETFLIXは面白い。

ワン

今日は家事が捗る。家事と言っても会社の寮暮らしなのでご飯も作らないし、トイレや風呂掃除もしなくて良い。私にとっての唯一の家事は部屋掃除と洗濯である。数少ない家事のうち、今日は洗濯が捗るのだ。最近新しく柔軟剤を購入したのだが、これがまあ良い匂いなのである。部屋にある洗えるもの全てを共有の洗濯機にぶち込む。共有の洗濯機は自慢ではないがかなりの年季が入っていてほこりだらけ。洗えば洗うほど誰かの衣類からでてきたほこりにまみれる。きれいになっているのか汚れているのかもはや分からない。そんなことも気にしなくなるほど柔軟剤の香りが良い。2週間おきの支給で洗濯の必要のない布団カバーやシーツまで洗い出すのだからこれは驚いた。狂ったように洗濯をし、床で寝転がることができないほど小さな部屋に干すと部屋に入るたびに強烈な良い匂いに襲われる。そろそろ部屋干しが気持ちよくできる広い部屋に引っ越したいものだ。ワンルームどころか、キッチンもトイレも風呂もないワンの部屋に住む者、こうして物件探しを始めるのである。

みょん

残業調整のために、いつもより早く仕事をあがるとやり残したことがあるのではないかと不安にかられる。これじゃあ、せっかくの早上がりリラックスもできない。まだまだ気持ちの切り替えが下手な社会人3年目。25歳だ。
 と言いつつも、あいみょんのライブビデオを鑑賞しながらいかみりん煎餅とブリタの水を楽しんでいる。歌っていいなあ。あんなに短い歌詞で万人の心を掴むのだから思わずため息が出てしまう。二時間ぶっ通しで楽しんだ。気付けばもう風呂に入って布団にくるまないといけない時間だ。さっきまでくよくよしていた自分は吹き出してしまうほど元気になっている。だってあいみょんがどうせ死ぬなら楽しもうぜってゆう感じの歌を歌っていたんだもん。どうせ死ぬのなら仕事で大失敗してやろう。どうせ死ぬんだもん。まだだけど。

今日のお供

 エド・シーランの新曲Visiting Hour を初めて聞いた時、耳馴染みの良い、心落ち着く歌だと思った。

私は自身の英語の習得のためにまず歌詞を見ずに何について歌っているのかを聞き取る。曲の冒頭ではっきりとHeaven:天国と歌っている。タイトルのVisiting Hour:面会時間と合わせるとなんとなく亡くなった人に会いたい、と語っている歌なのかなと想像できる。歌詞をみずに聞いただけでは詳しく分からないけれど、貴方が亡くなってから多くの物事が変っちゃったよ。会いたいよ。と歌っている曲のような気がする。これだけで涙がでちゃうのだからきっと今日は精神状態が良くない。

 歌詞を調べながら詳しく歌詞を理解した。こんな時、あなたならどうするのだろう。と故人を慕う歌詞はたまらない。今日はこれを聴きながら歌詞に登場するワインでも飲もうか。しまった。小さな寮の部屋、ワインなど持ち合わせていない。冷蔵庫を開くとブリタの浄水ポットに入った水があった。今日の水晩酌のお供はVisiting Hourだ。